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芹が保健室に向かう最中、傍観者の2人は学校から少し離れた鉄塔の上にいた。
「3日持たせるとは、花嫁殿もやるな」
「体も結界も随分ボロボロですがね。」
「確かに、結界に生じたひび割れから実体を持たない妖はいくらか侵入している。だが――その結果は実に興味深い」
「青様?」
「早く手に入れたいものだ」
「――それより、このままで大丈夫でしょうか」
「ん?」
「奴らは力をありったけ注いでおります故、力が底 をつくのも時間の問題。花嫁の力が落ちている今、上位の妖が取り込みでもしたらいささか面倒なのでは」
暫く主を見上げ待つが、一向に答えのかえらない様子に烏は子首をかしげる。
「――烏よ、どうやらその予想は当たったようだぞ」
「は?」
烏は青が見る視線の先を追う。
するとそこには、結界に群がっていた妖を次々飲みほす異形のものが。軽い舌打ちと共に青が鉄塔を飛び上がる頃には黒い異形は白い結界の中に入っていた。
「やつは今の花嫁殿には荷が重い。
――少々厄介なことになりそうだ」
保健室に眠る芹の方へ顔を向けると、青の呟きは白昼の空に吸い込まれる。
「烏、動くぞ。」
「御意」
烏は真っ直ぐ空へ飛び立つと残った青は校舎を睨み付けて言った。
「我が花嫁に手を出すことは、たとえ何者であろうと許さぬ」
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