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芹、大分辛そうだったけど大丈夫かな。
「ちょっと行ってくるね」
今日は芹の体調不良が始まって4日目。約束通り絶対病院いかせるんだから。
「あ、保健室?」
「うん。」
「行ってらっしゃい。
――そうだ、美保。ついでにイチゴオレお願い」
「わかった」
保健室と自販機は反対側だから、先に自販機寄るか。
美保は保健室までの道のり、廊下を歩きながら違和感を感じていた。
放課後に突入した今、校内には人はあまりいないはずなのだ。
元々進学校で部活動生自体が多くはないし大半の生徒は塾に通っているため教室ならともかく、廊下にはほとんど誰もいないのが普通。
それなのに、今日はやたらと人が多い。
「ねぇ、君」
「あ、はい」
「蜜乃餌、知ってる?」
「え、蜜乃餌?」
芹のこと、だよね。蜜乃餌なんて名字珍しいし。でも、誰だろこの人。知らない人――あ、赤のライン。3年なんだ。
「知ってるの、知らないの、どっち」
「あの
――知らないです」
美保は見知らぬ上級生の苛立ちを含んだ物言いになんと無く不審なものを感じる。
「そう、なら――」
「嘘はよくないよ。片瀬 美保さん」
いきなり背後からかけられた言葉に、美保はビクリとして恐る恐る振り返る。
「君、知ってるでしょ。
蜜乃餌さんのこと」
「会長――」
彼は美保のよく知る人物。柔らかなもの腰に優しそうな顔つきの彼は、生徒会で知り合ったうちの生徒会長。
見知った人なのに、美保はさっき以上の不信感を抱いていた。
――目だ!美保はとっさにそう思った。いつもの会長のはずなのに、その瞳は恐ろしいほど黒い。
底の見えない深すぎる黒。
「会長?」
美保の声は自然と震えていた。
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