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「片瀬さん。
蜜乃餌さんはどこにいるのかな」
「会長、どうしたんで――」
「あひひっ、君、知ってたんだ。」
後ろにいた名前もしらない上級生に言葉を遮られるのと両腕を捕まれたのは同時だった。
「ッ――なにするの?!」
「蜜乃餌、どこ」
「蜜乃餌、欲しい」
「どこ、どこにいるの、蜜乃餌!蜜乃餌!」
「欲しい!欲しい!」
「ひっ――」
気付けば美保は辺りにいた生徒や先生に囲まれていて、あちこちから腕や声が伸びてくる。
焦点の定まらないものもいれば、一点を見ているものもいる。ただ共通しているのは、皆そろって芹を探していること。
美保は親友が関わっているであろうこの異常な光景を前に恐怖するが、腕を捕まれているため逃げることも叶わない。
「片瀬さん、あまり時間がないんだ。只でさえ結界の中で蜜乃餌を探すのは大変なのに、あれにたどり着くための接点を持った体になかなか出会えなくて困ってたんだ。」
「何を言って――」
「悪いけど、力を貸してもらうよ」
美保が会長の目を覆うどす黒いもやを見たときには、会長の手が既に目の前にあって、自身の悲鳴と途絶える意識の間で親友の顔を思い出した。
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