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フェリシア共和国の巨大な王宮、真っ暗な夜でもそこだけは明るく光っている。
王宮内の広間、深紅の長いじゅうたんがひかれた両脇にはふくよかなおなかをした男性たちがいる。これは全員フェリシア共和国王の家臣、もしくは貴族の皆様なのである。どの人もみな、きらびやかな衣装に身を包んで玉座についている一人の「少年」をじっと見ている。
「あれが、噂のミシェル皇子か。噂には聞いていたがお美しい!」
「さすが前王の正当な血筋ですな!!面影がありますな!」
「すべてを吸い込むような美しい黒髪に黄金のような瞳、齢は18・・・うらやましい限りですなぁ」
・・・こんなデブたちに褒めちぎられたってうれしくない。私はミシェルだけどミシェルじゃない。確かに前国王のお父様ネリー・スカラティの第1子であり、正当な後継者である私は玉座(ここ)に座ってもいいのだろうが問題はそこじゃないんだぁぁ・・・。
(なんで私がこんな目に会うんだよぉおおおお!!!!)
そのデブたちにいやというほど見つめられていて、心の中で愚痴をこぼしっぱなしでいるのは「彼」ではなく「彼女」なのだから。
彼女がこんな目に合う羽目になったのは一週間前の話になる。
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