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とある森に、キコリの少女が暮らしていました。
両親が亡くなってからは、独りで暮らしています。
しかし、少女はヘッチャラでした。何故ならば、父の形見のナタがいつも一緒だからです。寂しくなんかありません。
少女は、そのナタに「アップル」という名前をつけてあげました。「ナタ」では少々無骨で、かわいくないと思ったからです。
いつものように、少女はアップルちゃんに話し掛けます。
「ね、アップルちゃん、今日のお昼ご飯は何が食べたい? ね、アップルちゃん、私はウサギさんがたべたいな。ね、アップルちゃん、アップルちゃんもたべたいよね。ね、そうだよね、アップルちゃん……」
少女はしばらくそうしてアップルちゃんに話し続けました。
父の形見のナタは、とてもこの世のものとは思えないほど、丈夫で、きれいで、良く切れました。木も岩も肉も骨も、小鳥もウサギも狐も熊も、きれいにスパッと切れ、刃に脂が付いて切れ味が落ちることもなく、刃こぼれひとつありません。
少女とアップルちゃんは、お昼ご飯であるかわいいウサギさんを探しに、山の奥へ行きました。
そして、少女は要領良くウサギさんを見つけると、手慣れた手つきで抱き上げ、皮袋の中へ生きたまま放
り込みました。
ここで殺したり、アップルちゃんを使って解体したりしてはいけません。動物さんは血と死の匂いを怖がります。
それはつまり、この山から逃げ出すということです。ですから、少女は極力殺さないように心掛けているのです。
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