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「知らない」
お客さんには違いない。
だけど、声の感じからしてイヤな予感がする。
「ふーん。まぁ多分、私のキライなタイプだろうけど」
誰もいないことで、梓が本音を溢す。
私も思っていたことだから頷いた。
「準備もう終わった?」
「あとはメイク道具のチェックだけ」
ふたりで黙々とチェックしていると、ドアが開いた。
杏さんか泉さんかと思いきや……
「ここは関係者以外ご遠慮願います」
驚いて何も言えない私の代わりに、梓が受付スマイルを張りつけて言った。
すぐに出ていくかと思ったら、予想外な一言にまたもや言葉をなくした。
「どっちが翼さんのカノジョなの?」
梓も一瞬目を丸くしたが、すぐに気を立て直した。
「あなたに答える必要はありません。早く戻ってください」
「……ッチ」
明らかに不機嫌な顔をして出ていった。
「ちょっと聞いた!? あの小娘舌打ちしたわよ! やっぱり、キライなタイプだった!」
梓もお客さんの態度に笑顔で対応したが、青筋は隠せない。
未だに怒りがおさまらない梓よりも、私はさっきの女の子のほうが気になった。
可愛い子だった。
ふわふわの髪も円くて大きな瞳も。
白いハリのある肌はチークやアイシャドーが映えていた。
強気な雰囲気はこの際置いておく。
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