桜樹楓 ii

4/21
131人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
「そういえばたっきーってなんで『夜の王子』について調べてるの?」 「うん?」 「さっきの以下略」 「お前ってねーくんと同じレベルって訳でもないんだな」 「うん。私はねーくんのサブパーツだからね」 木咲木の自虐的な台詞に引っ掛かったけども僕は袖を捲り、続けた 「僕の捕まえた『夜の王子』の模倣犯の傷の付け方を見てくれよ」 「うわっ痛々しい」 「カミソリだったんだよ。そいつの得物」 「え?」 僕は資料を見せた 「被害者は皆6針以上縫っているんだ」 「カミソリじゃ無理だね」 「だから必然的に使っている得物はナイフってことになる」 「なるほど」 「だからカミソリを使っていた『夜の王子』は偽物ということになるんだよ」 僕が大体の説明を終えた所で最初の事件現場に着いた 川鴨地区のゲームセンター〈コールイン〉の駐車場だった 「人気無いな」 「だね…」 駐車場にしては車が止まっていないし、人気もない 「何もないな」 「だね」 「うっし!」 「ん?」 「たまには遊ぶか!」 「そうだね」 僕達はそのままゲームセンターに入り、プリクラに入った 「木咲木…気づいているか?」 「うん。付けられているよね」 「誰だと思う?」 「知らない」 「だよな」 僕はそのまま携帯の録音機能をオンにした 「これから僕はそいつとコンタクトを取ってみる」 「うん」 「お前はそいつと僕の会話を見てろ」 「解ったよ」 僕はプリクラから出て、適当にブラブラしていると、背後から誰かが近づいてきた。振り向くとそこには東山さんがいた 「東山さん?」 「建崎君!」 東山さん声裏返っていますよとは言わない僕である 「どうしました!?」 「お前がどうした?」 多分どうかしましたと言いたいのだろうか 『か』抜けてるよ 「えっと建崎君見つけたから『夜の王子』の情報をと思って」 「だから僕達を付けてたのか…」 「ごめんなさい…」 「いいよ…で情報は?」 僕は東山さんを急かしてみた 「『夜の王子』って去年にも出たんだって」 「え?」 違う…違うんだ 「その時っては被害者は一人だけだったんだけど」 違う 「でも怖いよね…雨の日に人を殺そうとするって」 違う違う 「建崎君…顔色悪いよ?」 「大丈夫…平気だよ」 僕は吐きそうなのを堪えて答えた 違うんだよ…東山…それは『夜の王子』じゃないんだ… それは…僕なんだ 思考が結論に達した時、僕は誰もいない駐車場に走り出していた
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!