361人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
もう失いたくなかった。
仲間が殺されていくのを眺めることしか出来ない自分をひたすらに呪ったばかりだというのに。
例え進藤が極東の英雄と呼ばれようとも、たかだか一人の兵士。戦術になり得ても戦略になり得ない。
いずれ再び彼らの死と直面しなければならないのは明白。耐えきれるか? 不可能だ。もう二度と体験したくない。
“……だけど、人は死ぬ”
軍人であるのならば覚悟しろ。
訓練兵に、部下に、戦友にそう言い続けてきた。英霊に対して悲しむ顔は見せるな、と教育してきた。
その結果がこの様か。
「俺も何一つ解ってなかったってことかよ」
無造作に頭を掻く。
脳裏を過る様々な人間の死を総括して、気が狂いそうな悲しみと憎しみを内包して、進藤は声にならない声をあげた。
「ああああああああああッッ!!」
誰に聞こえることも憚らない。
戦場で圧し殺してきた感情を爆発させた。
そうしなければ壊れそうだった。
この摩訶不思議な現実に耐えきれなかった。
「……はぁ、こうなったら――」
時間が戻った。されど実力は以前のまま。魔力刻印、魔法刻印、どちらもある。八年間に渡って鍛え上げられた剣術、魔法、経験、知識がある。
なら、どうするか?
“やってやる”
先ずは小手調べ。
本当に過去の世界なら、今すぐ行動しないと九州は壊滅状態になるのは必至。
「行くか……」
最初のコメントを投稿しよう!