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無論、モニターを見ればシルバーファングと書かれているため確認せずとも一目瞭然なのだけど、敢えて篠崎に尋ねると、部下である彼女は僅かに顔をしかめて答えた。
“訓練兵の頃、一時的に教官を勤めていたからなコイツは”
教え子たちの成長の無さに、失望と不安を兼ねているのだろう。
モニターを眺める視線。そこには『心配』と云う二文字が大多数を占めていた。――きっと本人は否定するだろうが。
目頭を押さえ、溜め息を飲み込む。
駄目だ。徹夜明けのせいか要らないことばかり考えてしまう。
“研究が間に合えば、こんなことには――”
部下を責めるのは御門違い。
秋綴の研究が全軍に普及すれば戦力増大は間違いなし。なのに、いっこうに進まない。適合者が居ないことも原因か。
“って、今は夜叉のことに――”
「司令、結界の準備が整いました」
「――ああ。全通信兵に告げる。生き残っている残存部隊を今すぐ後退させろ。余力のあるブレイド大隊を殿にし、出来る限り多くの兵士を下がらせるんだ!」
「了解しました!」
各部隊ごとに割り当てられた通信兵が、一斉に秋綴の指示を飛ばしていく。
これから張るのは『異界』とも呼べる結界だ。
巻き込まれたら命を保証できない。
だからこその後退。
しかし、左翼を担当している通信兵が大声で叫んだ。
「おい! シルバーファング5、何をそこでボケッとしている! 早く後退しろッ!」
『あ……あ……』
「HQよりシルバーファングへ、直ちに後退せよ! シルバーファング5も急ぎ後退せよッ!」
徐々に後退する左翼前線。
仕方ない。時間稼ぎにしかならないが、包囲されるよりも生き残る確率は上昇する。
「何をしているんだ。残存部隊を早く一定ラインまで下がらせろ!」
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