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『この戦い、早期に終わらせないと九州が全滅するぞ!』
「何を戯けたことを――」
通信兵が尚も叫ぼうとした直後のこと。篠崎が彼の持つ通信機器を無理矢理奪い取った。
戦場を冷静に俯瞰する能力を必要とする通信兵は少尉相当官の地位を持っている。
だが、篠崎遙は大尉だ。反論することも許されない。
何かを言い掛けて、それでも篠崎の冷徹な表情に気圧された通信兵は何も言わずに口を閉じた。
アメジストを思わせる切れ目に不信感を漂わせながら、この危機的状況に於いてなお言う。
「私が秋綴大佐だ。貴様の名前、目的、どこの所属かを早急に言え」
『――――』
青年は黙った。
あまりにも動きの遅い後退を支援すべく、彼は一人で今も動き続けている。
今も危険地域にいるシルバーファング中隊は残り五名。結界発動予定時間まで十分を切った。
間に合うかどうか首を傾げるところだ。
『――ああ、そうかよ。お前らがここまで弛んでいることは俺の想定外だったよ。なぁ、篠崎大尉!』
「……!」
激昂する青年が無造作に剣を振り回す。眼前に迫っていた空夜叉を一太刀で絶命させる威力。
それよりも、秋綴は二つの事象に眼を奪われた。
“篠崎だと見抜いたのか、それに肩が光っているような……”
疑問はすぐに払拭された。
『そこにいるんだろ、秋綴大佐! 俺は“二つの印”を持ってるッ!』
「……通信機器を貸せ、篠崎」
「しかし司令……!」
「いいから貸せ。貴様は結界発動のタイミングを見極めろ。一匹たりとも市街地に行かせるなよ」
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