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「司令! あのようなどこの馬の骨とも解らない輩の命令に従うなど――」
「私が全責任を負う。貴様は結界発動のタイミングをただ見極めるだけだ。いいな?」
「…………はっ、了解しました」
文句を言わさない確認の言葉に、篠崎は不承不承ながら首を縦に振った。
不満げな表情を崩さないまま、各系列の責任者に命令を与える。支援砲撃を右翼集中、殿に徹していた兵士に早期撤退を促し、結界発動までの時間が秒単位で司令部の緊張を促進させた。
『こちらシルバーファング、結界発動まで残りいくつだ!?』
「――こちらHQ、残り四分を切ったぞ!」
『了解! シルバーファング5と共に撤退ラインまで後退する!』
青年は前線を離脱し、腰を抜かして立てない辻貝秋葉を脇に抱え、一目散に戦場から離れていく。
魔力活性を最大限使用しているのだろうが、その速さに司令部内でも驚きと感嘆の声が洩れた。
「速い……」
「優香里の奴め……。息子があんな化け物とはな。さっさと教えてくれればいいものを」
間に合わないと思われた撤退も完了。ブレイド大隊を始めとした各残存部隊も結界に巻き込まれない範囲まで後退を終了させている。
「篠崎、やれ」
「了解しました、司令」
西暦二〇五三年四月八日。
午前十時六分。
福岡と佐賀の県境は結界により封鎖され、草も花も人工物も存在の許されない異界と化した。
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