Chapter1 戦場の薫り

29/45

361人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
 先程の波動によって足止めされた夜叉も合流したためか、進藤の周囲が様々な夜叉によって埋め尽くされた。  左目に映る情報にも赤い警告の文字が浮かび上がっている。  一般兵士なら絶体絶命の状況に際して尚、進藤は冷静な思考を止めない。  目測による計算を行う。  戦車夜叉一五八体、触手夜叉四六五体、地夜叉三〇一体、目に入る範囲だと土竜夜叉九二体といったところか。  合計で千体を越えている。  周りの風景が夜叉によって塗り固められたのを見ると、軍人としての血が沸き肉が躍りそうだ。  “行くぜ、化け物ども”  静かに吐き出された呼気を合図にして、進藤はその場から消えた。魔力によって伸ばした剣を片手に、始めから超高速戦闘に持ち込んだのである。  比較的夜叉の密度が薄い場所に潜り込み、手当たり次第に腕を動かしていく。  血飛沫が舞い、肉片が飛び散る。  青白い肌が特徴である触手夜叉の鞭のような腕の乱舞を一本一本を見極めて、その隙を突いて、進藤は攻撃に転換。胴体を断切、返すように足元から奇襲を仕掛けようとする土竜夜叉の穴を魔法で防いだ。  背後から迫る戦車夜叉に動きに呼応して、進藤はその場で後ろ向きに跳躍。  戦車夜叉という名前の代名詞ともなった砲台の上に着地。一太刀でその砲台諸とも身体を切断した。  倒れる戦車夜叉から離れ、一拍置いて、魔法と一緒に剣を横薙ぎ。  無属性魔法変化、斬波。  斬切の波が周囲の夜叉を適当に切り刻んでく光景は、筆舌にし難いほどの爽快感を覚えさせる。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

361人が本棚に入れています
本棚に追加