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敬礼して足早に立ち去る男を尻目に、秋綴の赤みを帯びた瞳が進藤を貫いた。
「待たせたな」
『――イエーイ』
声だけでなく、顔も見てみると懐かしさが一気に心根から込み上げてきた。
“ヤバッ、泣きそう……”
涙腺が緩くなっているのか。前の時代では母親代わりに、進藤の面倒をみてくれた秋綴を見るだけで涙が溢れそうになる。
それも全て、ボサボサの黒髪青年の突き出したパソコンの文字を視界に入れた瞬間、台無しになったけれど。
「…………」
空気読めよ、と怒鳴りたくなったのは内緒である。
「どうした? 貴様の望み通り独房に入れたのだが、どこか不満だったか?」
『――ワガママ野郎めが!』
「……いえ、この処遇に関して不満な点は一つもないですよ。ただそのボサボサ頭がムカつくだけで」
顔から判断するに進藤と歳は近いだろう。整った顔つきだが、両目の下に浮かぶ隈が酷すぎる。
「コイツは貴様がこれからの問答で嘘を吐いているかどうか見極めるのだ。誉めちぎっていた方が身のためだぞ?」
『――さぁ遠慮無く誉め讃えるがいいぞ、この雑種めが!』
「…………」
要は嘘発見機代わりか。
尉官を現す蒼い軍服を着ているのが不思議だが、露骨に触れてもメリットは無さそうなので無視することに。
「秋綴さん、俺のお袋に連絡つきましたか?」
「ああ、つい先程な。だが貴様の望むような返信は無かったぞ?」
「でしょうね。俺もその辺りは期待してませんから」
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