Chapter1 戦場の薫り

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 椅子と同じ鋼鉄製のロープで縛られながらも小さく肩を竦める。 「お袋は何て言いました? 進藤一樹は実在するけど、あの映像みたいに戦ったりできる子じゃないってところですか?」 「――貴様は、何者だ?」  不気味な存在を凝視するように秋綴は言の葉を紡ぐ。  自らが手に負えない代物と理解したときに取る人間の自己防衛。反射的に行われるそれに、進藤は笑みをもって答えた。 「未来人、てところですか」 『――へぇ、マジかよ』  ガチャ。連想される行動は一つ。  秋綴の手にあるのは漆黒の銃。軍隊に入ったときに配給される拳銃の一つで、整備性の良さとデザインの高さが人気でもある。  鉄格子を挟んで、かつての母親代わりに銃口を突き付けられた。  “何だか、想像してた展開だな” 「正直に答えろ。貴様は何者だ?」 「秋綴さんこそ、俺の皮膚や血なんかを調べたんですよね? 魔法刻印と魔力刻印についても」 「…………」 『――嘘は吐いていない。ていうか、嘘って認識していないね』  キーボードを叩かずに文字をディスプレイに映しているのはどういう技術なのだろう。  西暦二〇六一年でもその技術は生まれてなかったけれど。 「よく解ったな、調べたと」 「篠崎大尉が優秀な人だって知ってますからね。確かに今朝の事後処理や各方面への対応がありますけど、わざわざ半日も必要ない。じゃあ何をしたか? 自ずと答えは一つです」 「……馬鹿ではないようだな」 『――見た目そうだけど』  一々勘に触るボサボサ頭の男を無視して、進藤は一気に勝負に出ることにした。 「皇国技術所主導――MS搭載兵士倍増極秘計画。通称『MSSプラン』」
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