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進藤が立ち去る際に、仕事を終えたばかりの篠崎に頼んで彼に割り当てられた佐官室へ案内させた。
今朝の戦いで亡くなった佐官の部屋なため、まだ私物の整理は完了していないけれど、進藤は気にしていませんよと笑って答えた。
この程度、未来ではごく当たり前のことでしたから、と。
自室にて椅子に腰かけたままの秋綴は、ソファに座って夜食を頬張る紫音に尋ねた。
「紫音、アイツを使えると思うか?」
『――研究材料として最高。戦力としても最強。人となりも悪くないと思う。不安要素は一日目で未来を変えたことぐらい』
秋綴に見えるよう、テーブルに置かれたパソコンに浮かぶ文字列を読み、大佐は煙草を吸いながら頬杖を着いた。
「確かにな。九州が落ちれば世界的にも大ニュースだろう。それに呼応して未来の情勢が決まったとすれば、今後何が起きるのかアイツにも解らないということだ」
『――けど、未来を知るのは烏滸がましい』
美味しそうにたこ焼きを口にする紫音。眠たそうな瞳に、僅かだけど感情が戻った気がした。
「研究者、技術者として不愉快なのか?」
『――最高のサンプルが手に入ったからウキウキ気分だけど?』
「違うさ、そうじゃない。アイツを元の時空間に戻せないことが、アイツに降り掛かった悲劇の理由が解らないことがだよ」
『――……仕方ない。世の中は謎だらけ。ボクみたいな存在もいるし』
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