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“良かった……。怒ってるわけじゃないみたい”
ホッと胸を撫で下ろす。
最大の懸念事項は無事通過。
安心した秋葉は決められていたように立ち上がり、胸を張って敬礼した。
「昨夜、私、辻貝秋葉少尉が進藤少佐の副官として任ぜられました。以後ご教授よろしくお願い致します!」
「ああ、よろしく。しかし流石は秋綴司令。仕事早すぎだろ」
苦笑混じりの微笑みを浮かべ、進藤は手を下ろせと言った。朝から堅苦しいのは勘弁してくれ、とも。
秋葉は敬礼を止め、再び正座する。
「仕事が早い、とは?」
たった一日で副官を決めて配属させたなら、確かに仕事が早いと云えるだろう。
しかし、秋葉が疑問に感じたのはその部分でなく、彼がこの配属を取り乱さずに受け入れたことだ。
まるで、すぐにでも秋葉がやってくる、と予見しているような――。
「俺が指名したからな。お前を俺の副官にしてくれ、と。まさか昨日今日で副官にするのは驚きだが」
思わず眼を見開いて確認した。
「そ、そうなのですか!?」
「ん? 事実だぞ」
「ど、どうして私なのでしょうか? もっと相応しい方が居られたと思いますが……」
この若さで少佐。強いのは昨日の件で知っているし、顔立ちも悪くない――むしろカッコいいと評すべき端整な容姿をしている。
正直つりあっていないと思った。
「ほら、俺は若造だろ? いきなり歳上の人間を副官に付けても、どっちも不愉快になるだけだし」
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