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にっこり笑う進藤を、秋葉は信じられない思いで見詰めた。
彼の強さは昨日の件で把握済み。
強化戦闘服を着ずに夜叉を圧倒せしめ、崩壊しかけていた左翼防衛ラインを一人で数分間維持し続けた天才であり、冷静さを失わない歴戦の兵士だ。
その進藤一樹が初陣でやらかした敵前逃亡。戦意喪失より遥かにタチが悪い。
秋葉も似たようなものだが、それでも彼よりはマシな部類だ。
なにせ敵前逃亡は軍法会議に掛けられる。こうして佐官に上がることも不可能になる重罪だ。
「ああ。当然、軍法会議にも掛けられたよ。幸い上官が庇ってくれて何とかなったが、アレは恥ずかしかったな。最後まで戦友にからかわれることになったし」
「そう、なのですか」
「だから、戦意喪失ぐらい可愛いものだ。俺が保証してやる、お前にはちゃんと才能があるって。だからこれ以上落ち込むな」
「は、はい」
慰められてもすぐに気分が浮上する訳もなく、小さな声で答えると、突然進藤が吼えた。
「声が小さいッ! 俺の副官なら毅然とした態度で受け答えろ!」
「は! 申し訳ありませんッ!」
「――ふっ、よろしい」
満足げに頷くと、進藤はおもむろに立ち上がった。和服の寝巻き姿に身を包んでいる彼の四肢は、予想よりも健康的で逞しい筋肉に覆われていた。
“やっぱり、昔から鍛練を積んでいたのよね……”
「……なぁ、辻貝。マジマジと見つめるってことはアレか? アレなのか? 俺の裸でも見たいのか?」
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