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ほう、と進藤は驚きの声をあげた。
「気付いていたのか?」
「はい、その……私は色々と傲慢でしたから。彼らを詰るために必要な欠点とか見付けられるように観察していましたし」
そういえば、秋綴司令がそんなこと言っていたな、と思い出す。
訓練兵時代から才能が溢れていた秋葉や他数名は、任官されてからも投影機械による演習で歴代最高点を叩き出し、お陰で自信が増長したため、傲慢な態度で他の兵士たちを見下していたのだと。
それも昨日の戦闘で修正されたらしいが、やはりどこかで気後れする想いがあるようだ。
“まぁ、未来の時は仲良くなるのに苦労したからな”
その辺の事情は知らなくて当たり前か。
「少佐こそ、どうしてその事を?」
「うむ。実は影ながら福岡基地に何度か出入りしたことがあってな。その度に腑抜けた空気を醸す怠慢兵士どもに嫌気がさしたものだ」
当然、嘘である。
「そうですか。噂では基地司令もどうにかしたい、と考えていたようですが」
「秋綴司令一人が意識を変えたところでどうにもならんさ。こういうのはそれぞれの危機意識から始まるからな。奴らにも昨日の戦闘で身に染みた筈だ」
実際、こうして食堂へ行く途中でも様々な軍人とすれ違うが、その誰もが進藤と秋葉に敬礼し、答礼したのを見ると、足早に自らの職場へ移動していた。
多少、気が引き締まったことだろう。
「……高い代償でした」
「シルバーファング中隊の程はどうだ?」
「芳しくありません。入院していないのは私を含めて六人だけ。死者は二八人、重傷者は一五人ですから」
「小隊規模にもならんな」
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