Chapter2 軍の在り方

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 歩き出す秋葉の背中へ苦々しげに呟いた。  まさかそこまで甚大な被害を受けているとは想定外である。  せめて小隊規模、つまり一八名が軽傷で終えていると考えていたのだが、まさかの三分の一とは――。  “こうなると、考えを改めるべきだな”  即刻、昨夜の内に決めていたプランを破棄。内心新しいプランを建てて、その際に必要な変更事項を思考しながら、進藤は別の考えに行き着いた。 「そういえば貴様、昨日が初陣だったのだろう? 戦死した仲間のことを想い、泣かずにいていいのか?」  初めて夜叉と対峙した時、進藤は未来で重度のPTSDに掛かった。  それでも、彼らの侵攻は止まらない。  こちらの都合などお構い無しだ。  刻印の有効性を周囲に知らしめるために、一定期間、進藤は進んで薬物や催眠療法で無理矢理戦場に身を投げ出した。  今思えば馬鹿をした、と思う。  催眠のせいか、親しい仲間が死んでも悲しくならない。戦場から離れても、ずっと夜叉を殺すことだけが頭のなかを渦巻く。  そして催眠が切れ、現実を直視した時には、戦死した仲間のことを大切に思っておらず、涙すらも流れなかった。  だが、感情が消えたわけではない。  ある時、限界量まで悲しみが積もったのだろう。  苦しさと悲しみが一気に押し寄せてきた。泣けども泣けども、胸を貫く痛みは消えなかった。  あのとき、姫がいなければとっくに進藤は壊れていただろう。  PTSDを克服し、催眠に頼らず戦場に立ち、部下が出来て、進藤は彼らに告げた。 『仲間の死を受け入れろ。そして思いっきり泣け。恥ずかしかろうが情けなかろうが、人目を憚らずに泣きわめけ。次の日は暗くても構わないんだ。そして英霊に感謝し、笑ってみせろ』  半分は自分に言い聞かせたようなものだったが。
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