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福岡基地、午前八時。
司令室。それは福岡基地で最も階級の高い者が居る部屋であり、最も皇国軍人たる気質を兼ね備えた者が居られる部屋でもある。
コンコン。二度ノックする。
『誰だ?』
中からの返事に、進藤は答える。
「進藤少佐であります!」
『よし、入れ』
「は!」
扉を開けて、すぐに閉める。
昨夜も見た司令室内部は質素なものだった。
左右に置かれた本棚、来客用に使うのだろう一対のソファと足の短い机、執務机に置かれた書類の山、日の丸の旗ぐらいなもの。
未来の彼女と変わらない様子に安堵しつつ、進藤は陸軍式の敬礼をした。
「大日本皇国陸軍福岡基地所属進藤一樹少佐、出頭要請に応え、只今参上致しました!」
「なんだ、貴様。軍務中はそのような堅苦しい態度なのか?」
机に両肘を置き、手の甲を組んで顎を乗せている秋綴が愉しげに微笑んだ。
若干疲れが取れた様子。
“今日だけでも寝てくれと頼み込んだからかな”
「は! 私には秋綴司令が何を仰っているのか解りません!」
「……まぁ、良い。何も知らん奴からしたら、貴様はまだまだ若造の癖に少佐の地位を得た糞生意気な餓鬼と云ったところだろう。そうやって真面目な空気を作るのは悪いことではないが――」
コホン、と咳払い。
「私の前では止めろ。貴様と私は協力関係にある。一々そのような堅苦しい態度を取られては、これからの対策を練る気にもならん」
「それが上官命令ならば従います!」
「上官命令だ」
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