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『――それじゃ、無理だね』
「亡くなった、だと……?」
「姫を護るため、小隊を引き連れて敵奥地に潜入。撹乱を用いて、夜叉の進軍を遅らせ、集まってきた夜叉を道ずれに一人自爆しました」
淡々と話そうと思っていたのにも拘わらず、自分でも気付いてしまうぐらい、台詞から溢れてしまった感情。
秋綴は眼を閉じ、何度か大きく深呼吸をした。
「――そうか」
「はい」
「未来で私は中々に凄いことをしたものだな。驚いたよ。その小隊に貴様もいたのだろう?」
「よく解りましたね」
「解るさ。貴様の私を見る眼が揺れていたからな。是非聞きたいな。私はどんな顔をして貴様と別れた?」
人間の本性が浮き彫りになる絶対の瞬間。それが死に際であり、死を覚悟したときだ。
醜い部分を見せるのか。
それとも諦観の想いで静かになるのか。
自らの死に際など聞きたいものではない。
進藤は脳の端に仕舞っていた記憶を引っ張り出して、秋綴と別れた時を優しい表情で語った。
「笑ってましたよ、貴女らしくもない満面の笑みで」
「……そうか。私は余程貴様を信頼していたようだ。こんな若造に瑞希様を託して逝くとはな」
『――レズ?』
確信した。今、確信した。
紫音は空気を読めないのではなくて、わざと空気を読まないのだ。でなければ、こんな場面でこのふざけた単語を出す訳がない――!
「すまない。話を戻してくれ。この戦略兵器を用いて、貴様は何をするつもりだ?」
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