Chapter2 軍の在り方

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「簡単な話、これで源本家と取引をします」 「取引? それが源本様を貶めるようなものなら私は今ここで貴様を殺す覚悟もあるが?」 「いえ、これは源本家にとっても有意義なものとなるはずです。俺たちが提供するのはこの城砕螺旋の技術と最高のサンプルである俺で、見返りは飛行挺建造のための製造ラインと資金です」  九州に於けるもう一つの最前線である天草基地は、夜叉の支配地域となった長崎への橋頭堡。最重要軍事基地の一つである。  そこに理論上エネルギーの分だけ射程距離の伸びる城砕螺旋を配置すれば、九州全土の安定はより強固なものとなる。 『――なるほど、解った。三ヶ月足らずじゃ企業は動いてくれないからだね』 「そうだ。それに各企業も魔力戦車の開発なんかに重点を置いてるだろうしな。わざわざ試験運用のための飛行挺を製造してくれるところは無いと考えるべきだ」  秋綴は眉を潜めながらも、 「そこで資金を源本様に出させるというわけか。その見返りに、貴様の未来情報や技術なんかを渡す、と。皇国軍人として恥ずべきことだな、これは」  言われずとも解っている。  皇帝陛下、そして各地を治める大名と軍人が取引をするなど前代未聞である。仕えるべき君主に条件を差し出すなど――。  その場で殺されてもおかしくない。 「ですが、三ヶ月という短い間で福岡基地を存続、そして九州全土平定のためにすべきことだと俺は進言します」  だが、源本家と分家である秋綴がいれば話は別。耳を傾けてくれることはしてくれるだろう。  そこから先は交渉次第。
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