Chapter2 軍の在り方

22/36
前へ
/85ページ
次へ
「……その点については少し考えさせろ。明日には答えを出す」  渋い顔でこめかみを揉む司令。  苦悩しているのだろう。福岡基地存続のために源本家と交渉するという暴挙を犯すのか、それとも皇国軍人としての誇りだけで夜叉と立ち向かうのかを。  だからこそ、進藤はこの場で追求することを止めた。 「解りました。明日また聞きます」 『――で、その飛行挺を何に使うわけ?』  絶妙なタイミングで紫音が訊く。  その辺を話していなかったな、と反省し、進藤はもし仮に飛行挺が上手く造られた時のことを説明し始める。 「戦闘が起きてすぐに奇襲用として絨毯爆撃を開始します。安全に。すると夜叉の優先目標が飛行挺になるので、その隙に機甲師団で強襲するんです」 「それだけのために作るのか?」 『――だったら、既存の爆撃機でいいような……。死なばもろともだしさ』  さらっと酷いことを文字にする紫音。 「いえ、飛行挺で最も重要な任務は、手薄になった夜叉の(ネスト)へ奇襲を仕掛けることです」 『――?』 「奇襲、か。それでどうなる?」  二人とも首を傾げる。  ネストへ奇襲を仕掛けたところで何の意味があるのか、と眼が訴えてくる。  勿体振ることもせず、答えた。 「そこで超精鋭少数部隊を降下させます。そして一気に虚空夜叉を殲滅といった具合ですかね」 「……そんなことができるのか?」 「できますね。それも幾つか条件がありますが。けど、そのネストを統括している虚空夜叉さえ叩いてしまえば、他の夜叉なんてほとんど有象無象でしかないです。戦術さえとってきませんから」
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

361人が本棚に入れています
本棚に追加