Chapter2 軍の在り方

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「……ふぁああ、眠い……」  一触即発と表現しても構わない空気に包まれたブリーフィングルームだが、その中でも悠々自適に自分の行動を貫く二人がいた。  その内の一人は、一本一本が絹のように細い金髪をセミロングにしている少女。お洒落な眼鏡――青いフレームが彼女の青い瞳と一致し、煌めきすら感じられる。  美少女と謡われる容姿が関係してか、同性である秋葉ですら、欠伸をする様を可愛いと思ってしまった。 「……春、睡魔を強くする」  何やら呟いているけど、彼女はマイペースかつ不思議な性格をしているので一々気にしない。  部隊内で、これは暗黙の了解。 「…………」  もう一人は、黙々と腕輪型端末情報――携帯を起動させ、ディスプレイに映る最新ニュース情報などに眼を通していた。  赤い髪の毛は短く切り揃えられている。黒い瞳に先日の疲れは見えない。ドッグタグの他にネックレスを着けているが、誰もその話題に触れようとはしなかった。  有名な進学高等学校で成績トップだったのにも拘わらず、軍隊に引っ張ってこられた彼は口下手で、あまり部隊内でも話すことはないからである。  金髪の少女はユリア・ブリメール少尉で、赤髪の男性はドーダス・ヴァンレノン中尉。  前者は秋葉と同期、後者はこの部屋にいる人間でシルバーファング歴最長の強者だ。 「こら! 落ち着け、クレイス!」 「くそ、このアマ! オレだってアンタみたいな露出狂願い下げだってのッ!」  “いつまでやってるのよ、馬鹿”  額を手で覆う。見てられない。  あまりにも安すぎる挑発に煽られるクレイスの子供さにうんざりとした気分になってしまった。
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