Chapter2 軍の在り方

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 クレイスも秋葉と同年代の武芸士だ。性格に難があれど、腕は保証できる。  先日の戦い、掠り傷だけで乗り越えたことからも実力の高さは証明されている。  “だけど、少佐にこんな態度で突っ掛かったら……”  間違いなく殴られるだろう。  まだ進藤について詳しく知らないけれど、軍人として誇り高い方だと理解しているから。 「クレイス、そろそろ隊長が来るのよ。早く自分の席についた方がいいんじゃない?」 「辻貝の言う通りだ。貴様のような子供はしっかりと着席しているべきだな、小学生のように」 「て、めぇ……ッ!」 「だから一々挑発に乗るなって! リュンゲル中尉も刺激するようなこと言わないでくださいッ!」  アーリャがフフンと鼻を鳴らしてクレイスを小馬鹿にする。明らかに蔑如する態度。  こめかみに青筋浮かべて暴れる青髪の男を、何とか思い止まらせようと奮闘する黒髪の男が勘弁してくれと泣きそうな声で叫んだ。  “凍坂も苦労するわね”  秋葉と同じ日本人の凍坂大護(とうさか だいご)。黒髪黒目。四肢を武器にする彼の肉体は、一種の芸術品と呼んでいいぐらいの筋肉に覆われている。  青い軍服がはち切れそうだ。 「それは失礼したな、童貞諸君」 「どう――ッ! クソ、その態度がムカつくって言ってんだよ、さっきから!」 「はぁ。リュンゲル中尉もクレイスもいい加減に――」  無意識に吐き出された溜め息。  このままでは何時まで経っても収拾が付かないと危惧し、せめて十時になる前に止めようとしたのだけど――。 「貴様ら、それが上官を迎えるときの態度なのか?」  先に進藤一樹がブリーフィングルームへ入ってきた。
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