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詳しい話は必要ない。そう言外に突き放された凍坂が腰掛けると、隣でふてぶてしく進藤を睨み付けていたクレイスが席から立った。
「同じく、クレイス・エルメロイ少尉でーす」
「アーリャ・リュンゲル中尉です」
「…………ユリア・ブリメール……」
「ドーダス・ヴァンレノン中尉であります」
秋葉も名乗ろうとしたが、貴様はもう知っていると機先を制された。
先日の戦いで生き残り、重傷も負わなかった面子を見渡して、進藤はおもむろに溜め息を吐いた。
「貴様らがシルバーファング部隊の生き残りか?」
「そうですけどー、何か不満とかあるんスか?」
「…………」
少佐の副官として彼を咎めるのが好ましいのだろうけど、秋葉は火の粉が降り掛かっては堪らないと判断して、座ったまま無言を維持。
他の面々も同じだ。
「不満、か。勿論あるぞ」
「なら聞かせて貰っても構わないでありましょうか、少佐殿。ここにいるのは昨日の戦いで負傷しなかった連中っスよ? 正直、自分で言うのも何ですけど、精鋭揃いだと思うんスけどねー」
「精鋭か。傲りも甚だしい限りではあるが、それよりも致命的に愚かしいことがあるな」
やれやれと首を振る進藤は、紛れもない失望の色を浮かべていた。
期待外れだ、と小声で付け加える。
「……何スか、その致命的なものってのは?」
「貴様らは、部隊の半数が戦死したと言うのに悲しむこともしないのだな」
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