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「はァ?」
「少佐、それは一体どう言うことでしょうか?」
クレイスは訝しげに片頬を吊り上げた。発言、表情、どこからどう見ても上官を馬鹿にしている。
それを隠すように発せられた凍坂の問いに、進藤は真面目な顔で答えた。
「貴様らは武芸士だ。その身一つで戦場を駆け、自分より数倍の大きさを持つ化け物と戦う戦士。だから俺は言わなければならない。戦場において必要なのは、背中を預けられる仲間だとな」
「……進藤少佐」
秋葉は小さく彼の名前を呼んだ。
今朝の言葉が甦る。
『戦死した仲間のことを想い、悲しまなくていいのか?』
訊かれた時は覚悟を試されているのだ、と考えたが、どうやら勘違いしていたらしい。
アーリャが小首を傾げながら、
「――つまり、少佐は我々が今現在悲しんでいないことから、部隊内でのお互いの信頼などが著しく劣っていると仰られたいのですか?」
「無論、俺とて軍人だ。いつまでも仲間の死を悼むつもりはない。だが貴様らは、彼らの死を悲しまないほどに交流が無かったのか?」
「……あのですね、少佐殿。オレたちはアンタみたいな甘ちゃんじゃないんですよ。解ります? 最前線ではこれが普通なんですから」
せせら笑うクレイス。
進藤は厳しい顔つきで冷酷にその発言を侮蔑した。
「笑わせるな。一年間も実戦の無い基地を最前線など呼ぶものか」
「……うっ」
「そのため空気は弛み、奇襲に近い夜叉の侵攻を防ぎきれず、機甲師団が一つ一時間もしないうちに壊滅したんだぞ。シルバーファング部隊も既に小隊規模ですらない。その戦果でよくもまぁ、そこまで胸を張れるもんだな」
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