Chapter2 軍の在り方

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「だ、だからって、オレたちは生き残った! 夜叉だって何十匹も殺してやったッ!」 「ああ、そうか。それは良かったなエルメロイ少尉。で? 貴様たちは俺の質問に答えていないぞ。戦死した二八人を悲しまなかったのか?」  あしらうように一蹴する進藤。 「凍坂少尉、貴様は悲しんだか?」 「……い、いえ」 「何故だ? その馬鹿は五月蝿くて話が進まないからな。貴様が理由を述べてみよ」  馬鹿と蔑まれた憤りから何かを叫ぼうとしたクレイスを、進藤は眼だけで黙らせた。  様々な戦場を生き抜いた末に会得した威圧。心なしか、部屋の空気もピリピリとしたものに変化した。  ユリアとドーダスは無言を貫いている。彼らは秋葉より後方の席に腰掛けているため、その顔色や様子を窺うことはできない。  凍坂は逡巡した後、口を開いた。 「シルバーファングは国際色豊かな部隊であり、その理念は強さがあれば良しとされています。それぞれが戦争難民や孤児のため、お互いに深入りはせず、ただうわべだけの付き合いで……その……」 「よく解っているな。ならば何故それを改善しようとしなかった? 貴様らの部隊がすぐに崩れたのだって、一人一人が勝手なことをしたからだろうが」  何時の間に昨日の戦闘データを見たのだろう。あまりにも仕事が早い。  “……それに気付いたみたいだし”  シルバーファング部隊の半数が戦死した最大の理由は、お互いを信用せずに闇雲に夜叉と戦ったため。  全員気付いているが、だからと云って改善などできない。  それは――。 「お言葉ですが、少佐。シルバーファング部隊は先程も申した通り強さがあれば充分。誰が死のうが関係ない。強ければ生き残れますから」
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