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模擬戦をするのは構わない。
新しい隊長の実力を計るためにも必要なことだからだ。
これから自分の命を預ける上官なのだから、是が非でも模擬戦をしたかったのはアーリャも同じ。
頭と性格に難があれど、実力は申し分ないクレイスに勝てれば認めてやっても良いかな、と考えていた。
しかし、新しい隊長は気でも狂ったのか、ブリーフィングを終える直前に模擬戦は六対一でするぞ、と訳の解らない台詞を吐き捨てて出ていった。
“勝てるわけがないだろう”
実力重視の部隊。あの絶望的な左翼防衛戦でも、軽傷だけで生き延びた強者たち。
六人で戦うなど、相手を集団リンチするようなものだ。
例え、投影機械における幻想世界の戦いでも、上官相手にそれは些か気が引ける。
クレイスは傲慢で世間知らずな少佐だと嘲笑っていたけれど、アーリャは頭を抱えて自らの不幸を嘆きたくなった。
何しろ、新しく配属された我々の隊長は自己の強さを客観的に把握できず、尚且つ若くて傲慢で――腰抜けなのだから。
“まぁ、勝てば隊長から降りてくれるらしいし”
そこだけが安心できる要素だ。
勇猛果敢。
アーリャが求める隊長はそれを体現できる人物。
期待は空振りし、不安は増大した。
「はぁああ」
ため息が出るのも仕方無いと云えよう。
「どうかなさいましたか、リュンゲル中尉」
「いや、進藤少佐のことで少しな」
秋葉が心配そうに見詰めてくる。
少佐の副官となった彼女は、一昨日までと違って憑き物が落ちているようだった。
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