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『私立桜華学園。
そこは、日本でたった1校しかない超お金持ちのお坊っちゃんたちが通う、全寮制男子校。
敷地面積は東京の3分の1もあり、敷地内には高級ショッピングモールや一般的なところよりは一回り小さい空港などがある。
中でも一際目立っているのが、高い塀で囲まれた初等部から高等部までの校舎と寮。
出入りの自由は生徒たちにも認められておらず、外部から入ろうと思うとささまざまなチェックを受け、さらに理事長からの許可がないとはいれない。
ここまで徹底する理由は生徒にある。
桜華学園に通う生徒のほとんどは、会社や企業のトップにたつ人達の息子ばかりで、簡単に外部に情報が漏れてしまうことは断じて許されないのである。
そんな風にいろんなところにお金をかけているせいで、学費は一般家庭では到底払えないような額になってしまうため、一般家庭の生徒は高等部にたった二人しかいない。』
ここまで読んで、僕―松原由樹(マツハラユキ)は手書きで書かれたこの紙を畳んだ。
そして、ベッドに座っている僕の足元にある衣類や歯磨きなどか入っている、大きな鞄に視線を移した。
見るだけで、たくさん入っていることが分かるぱんぱんな鞄。それは、これが現実なんだと告げているようで、僕は無意識にため息を吐いていた。
「はぁ…。本当に僕、この学校でやっていけるのかな…」
不安で押し潰されそうになっていた僕は、呟いた言葉とともに不安も外に吐き出した。
でも、不安で押し潰されそうになるのは仕方ないと思う。
だって僕は今日、特待生としてこの私立桜華学園の高等部に転校するのだから。しかも、入学式が終わって1週間という、なんとも微妙な時期に…。
でもこの時期に転校することになったのには理由がある。
それには、僕が居候している井上家の長男で僕の幼馴染みでもある井上悠太が、関わっていたりする。
ちなみに僕の両親は、どこか遠くにいるらしい。らしい…っていうのは、僕には小さい時の記憶がないから。
両親の事もよく覚えてないし、今も連絡とか全然ないから、どうしようもないんだ…。
まぁ、悠太や悠太のお母さんが気にしなくていいって言ってるから、あんまり両親の事については考えたことないけど。
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