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「あぁ着方って何の事かと思ったら、由樹ちゃんは格好を服ととったんだね。えっとね、由樹ちゃん。私が今言ってるのは、服のことじゃなくて髪と眼鏡のことなんだよね…」
「髪と眼鏡…?あ、これはお母さんに頼んだら持ってきてくれて、つけてるんだけど。これだと目立たないと思って…」
実は今僕がつけている黒いもじゃもじゃの髪のかつらと、このフレームが大きい眼鏡は、お母さんがどこからか持ってきてくれたもの。
目立ちたくないのは、僕が内気だから。ただでさえ入学式から1週間っていう微妙な時期で目立つのに、さらに僕は、今高等部で2人しかいない特待生としての転校だからもっと目立つと思う。
だから、出来るだけ目立たないようにかつらと眼鏡いるかなと思ったんだけど…。
ちらっと裕璃ちゃんの様子をうかがうと、なにかぶつぶつ呟いていた。
「目立たな…いや、確実に目立つと思うけど。いやでも、由樹ちゃんかわいいから変装しないと余計目立つかな…。うーん…でもこの変装だといじめられるしなぁ。かといって、変装しなかったら絶対食べられちゃうし…あぁどうすればいいのー!!」
…だ、大丈夫かな?
内容までは聞き取れないけど、何か悩んでるっぽい感じがするからそう思ったんだけど…。聞かない方がいい気がする。何でだろう…。
もう一度裕璃ちゃんに意識を戻すと、裕璃ちゃんの中で答えが出たのか、すっきりした顔で僕を見ていた。
「よし、決めた。由樹ちゃん、変装した方がいいと思う。でも、1つだけ私と約束して。あまり、生徒会とは関わらないでね。生徒会なんかと関わったら親衛隊に制裁とかされちゃうし。絶対にこの約束は守ってね」
「うん、分かった。約束、絶対守るね」
そう言うと、裕璃ちゃんは今日初めて笑みをうかべた。
その直後、本来の目的を思い出した裕璃ちゃんは僕に、
「私とお母さんはもう準備できたから、由樹ちゃんも準備できたら降りてきてね」
と言うと、部屋を出ていった。
これからの学校生活がどうなるのか考えると、やっぱり今も不安になる。
でも、裕璃ちゃんの笑顔を見て、不安が少し癒されるのを感じた。
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