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それから、お母さんに送ってもらってようやく桜華学園に着いた僕は、正門前にいる。
ちなみにお母さんと裕璃ちゃんは、桜華学園の敷地内で唯一桜華学園の関係者じゃない人でも入れる、高級ショッピングモールに行くと言って帰っていった。
そして今僕は、門の前で佇んでいる。その理由は、入り口が見当たらないから。それと、門の高さに圧倒されて。
おそらく5メートルくらいはあるだろう門を見上げていると、後ろからものすごい足音がだんだんと近づいてくる。
何事かと思って後ろを振り返る。すると、誰かがこちらに走ってきていた。
桜華学園の制服を着ていることから、ここの生徒だと分かるその人は、僕の前まで走ってきて顔をあげた。
その人の顔…主に、髪と眼鏡を見て驚いた。相手も僕と同じことを思ったのか驚いていた。
「お前…俺とそっくりだな。鏡見てるみてぇ」
「はい。僕もすごくそっくりだな…って思います」
そう、驚くことに彼もまた、僕と同じもじゃもじゃの髪にフレームが大きい眼鏡をかけていた。
さらに、僕とこの人は身長も体格も似てるから余計にそう思うのかも。
僕がこの人の意見に同意すると、彼はいきなり自己紹介を始めた。
「俺は、桜華葉月だ。よろしくな。お前の名前は?」
「あ、えっと…松原由樹です。よろしくお願いします」
「おう。あと由樹、堅苦しいから敬語じゃなくてもいいぞ。もう俺ら友達だろ?」
「…え?」
友達…?
友達なんて悠太以外にいなかったから、ちょっと嬉しい…かも。
その気持ちを伝えると、葉月くんも嬉しそうに笑った。
その暖かい笑顔につられて、僕も自然に笑っていた。
「…あっ!!もしかして由樹も変装してる?それってかつら?」
「えっ?あ、うん」
僕の顔を見て固まっていた葉月くんは、いきなりそんなことを言い出した。
突然話題が変わったから少し戸惑ったけど、一応その通りなので頷いた。
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