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うっとりするくらい、艶っぽい大人な笑みで問い掛けてくる瀬那君に、私は頷く以外出来なかった。
そんな私の唇にもう一度優しく噛みついて、今度は子どものような無邪気な笑顔でおでこをくっつけてくる。
やっと慣れてきたというのに、やっぱり私の心臓は喧しく騒ぎ始めて。
あぁ、やっぱり大好きだ、と身も心も実感していた。
「せな、くん……好き……」
「……ん、知ってる。
俺も、好き」
「う、ん……っ」
「……そろそろ帰ろっか。
ちょっと、これ以上は俺がやばいから。
絶対あの図書委員が、邪魔しにくるようなことしそう」
甘く低い声でそう囁く瀬那君は、一足先に椅子から立ち上がって私に手を差し伸べる。
その手をおずおずとると、彼は少しくすぐったそうに目を細めてはにかんだ。
火照る顔を髪の毛で心なしか隠しながら、こっそり手を繋いで図書室を後にした。
ずっと、このままでいられたらいいのになぁ。
瀬那君の横顔をこっそり盗み見ていたら、ばちりと目が合って。
夕日に照らされた顔をキラキラと輝かせながら、ゆったりと人懐っこい笑顔で首を傾けた。
「明日も、一緒に帰ろ」
「うんっ」
「それで……。
一週間後も、図書室で。
こっそり、チカに触れさせて」
「……うんっ」
恥ずかしくて、一瞬間は空いたけれど。
私は思わず、力一杯頷いていた。
それには目をぱちくりとさせる瀬那君だけれど、すぐに柔らかく破顔して。
夕日で赤く染まった私にもう一度、幸せで甘い口付けを落とした。
【-end-】
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