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一方、ノイエ・カールスラントでは、メッサーシャルフの技術者が唸っていた。
「せっかく試作機ができて初飛行も済ませたというのに、肝心の空母が我が国にはない!」
この年の春、メッサーシャルフ社がカールスラント空海軍連名の要請で開発していた、空母艦載用の艦上ストライカーユニットの試作機が初飛行した。その次の段階として、空母への着艦試験と実戦運用試験を済ませなくてはいけないが、カールスラント海軍にはまだ使える空母が無かった。
「扶桑の空母を買ってもまだ戦力化できないとは、まったく情けない!」
カールスラント海軍は扶桑海軍から赤城型を2隻購入し、戦力化にあたっていた。しかしそれはまだ完了しておらず、実戦への投入はまだまだ先になる見通しだった。
「博士!朗報です!」
「何だ、騒々しい。」
一人のウィッチが部屋に飛び込んできた。その顔には喜びが表れている。
「扶桑で新部隊が結成されるそうです。この部隊は空母ではありませんが、航空巡洋艦なる艦が配備されるらしく、そこを拠点に活動するらしいです。」
「それがどうかしたのか?」
技術者は口を挟むがウィッチは気にせずに続けた。
「我が国にもウィッチの協力要請があったんですが消極的でして、ウィッチ自身からの志願が無い限り断るそうです。」
「で、何だ?」
「私が志願します。あれの実戦運用試験にぴったりじゃないですか?」
ウィッチの言葉に技術者は最初驚愕していたが、すぐに厳しい顔つきになった。
「ダメだ。まだお前は実際に空母に着艦したことがないだろう?それに巡洋艦サイズなら、さらに着艦は難しくなる。」
「だったらなんで空母の無い国に協力要請なんか出すんですか?」
「それは・・・。」
ウィッチの押しに技術者は口ごもる。言われてみればその通りだ。だが新部隊結成にあたって、断られるのを承知で社交辞令的に要請しただけでなかろうか?
「大丈夫ですよ。このアレクシア・モニカ・ライプニッツは、あのライチェンベルク大尉に負けるつもりはありません。」
ライチェンベルクとはフラックウルフ社お抱えのテストウィッチで、メッサーシャルフ社お抱えのアレクシアとはライバル関係にあたる。
「着艦ぐらい教えてもらいます。テストウィッチの順応力、なめないでください!」
「しかし・・・。」
技術者は冷や汗をたらして困惑する。彼女がこう言ったら、もう誰にも止めることはできなかった。
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