第一章 嵐の前のティータイム

5/7
前へ
/40ページ
次へ
 また大きく移動して、今度は太平洋の中心、リベリオン海軍の要衝、ハワイである。 「・・・ウェルズ大尉、ウェルズ大尉、至急作戦司令室に出頭せよ。」 「え?隊長、何かしでかしたんですか?」  空母ワスプ艦内の居住区で、一人のウィッチが上官のウィッチに声をかける。 「いや、何にも。」  呼び出された当人は心当たりがないと言う風に頭を掻いている。 「早めに行った方がいいかな?」 「ですよね。それではまた。」  部下のウィッチは雑誌や新聞を畳んで去っていく。上官の方も頭の上に疑問符をたくさん浮かべて、作戦司令室へと向かった。 「ステラ・ヴァネッサ・ウェルズ大尉、ただいま出頭しました。」  ドアノックと共に名乗る。しかし、ドアの向こうは静かなままだ。 「・・・ぶ、わっはっはっは!は、入れ!うくくくくく!」  しばらくしてから大きな笑い声と共に、入室を許可する声が聞こえた。 「艦長、さっきの呼び出し方はなかなか面白かったぞ。」 「ええ、まあ・・・。ああ、大尉、こちらに来たまえ。」  艦長と一緒にいたのは誰だか知らないおじさんだった。 「えー、こちら我が艦のウェルズ大尉。こちらは太平洋艦隊総司令官ニミッツ大将。」  艦長が柄にも無く相互の仲介役になっている。って、総司令官!? 「キミがウェルズ大尉か、よろしく。」  ニミッツはニコニコ笑いながら握手を求めてくる。何?私これから何されるの? 「あれ?緊張してる?まあいいや、本題に入るよ。・・・先日扶桑から、パシフィス―扶桑間の航路の安全確保のために、新部隊結成の協力要請があった。」  ああ、なるほど、私にその部隊に参加しろってことね。・・・でもなぜ総司令官殿が出てくるの? 「その要請を我が軍は受けることとして、大統領の許可も得た。提供艦の選定も決まり、後はウィッチだが、キミはどうかね?」  やっぱり。もちろん受ける。だって総司令官殿に、どうかね?なんて言われたら断りようもない。まさか、それを狙って? 「は、はい。受けさせていただきます。」 「そうか、ありがとう。・・・ああ、言い忘れていたが、キミが戦闘部隊の指揮官だそうだから、頑張ってくれ。それと、変更はできないからな。ハッハッハ!」  ニミッツは私の両肩を満面の笑みで叩く。やっぱりその手だったか。 「あ、はい。」  ステラはガックリと肩を落としていた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加