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いつか晴れた日に、お弁当を作ってどこか出掛けよう。
あの頃のように、お日様の下で無邪気に走り回るの。
これからは、ずっと二人で。
「もしも、わたしが涼を好きになってなかったら、どうなってたの?」
「記憶がないままで、黒崎涼として人生を送ったんじゃないかな」
「そう……」
想像してみると、複雑な気持ちになってしまった。
「それよりさ」
「うん、なに?」
涼が黒い瞳をキラキラと輝かせて、わたしを見詰める。
その瞳と同じように真っ直ぐな愛情を注いでくれるから、涼の前では素直になれる気がするのだ。
涼が、わたしをふわりと包み込むように、その腕の中に閉じ込めた。
「約束、思い出してくれた?」
わたしは、涼を見詰め返して微笑んだ。
「覚えてるよ」
【END】
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