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近くのスーパーに寄って食材を買って帰った。
「二人なのに、そんなに買ってどうするの?」と涼は目を丸くしたけれど。
この週末は、涼に栄養のあるものを食べさせてあげたくて。
料理が得意ってわけでもないのに、メニューを思いつくまま買い物カゴに食材を放り込んでいた。
「ただいま」
いつものクセで、玄関に入るなりそう言うと、「お帰り」と涼が返事をする。
それが、妙に可笑しくプッと吹き出して笑うと、涼は不思議そうに首を傾げた。
「なんで笑うの?」
「だって、一緒に帰ってきたのに」
「ああ、そっか。俺、あの頃、いつも『お帰り』って言ってたから、つい……」
あの頃とは、子供の頃の話だ。
学校から帰ると、尻尾を振りながらわたしに飛びついてきたチビタ。
あのチビタが涼なんて、未だに信じられない。
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