3448人が本棚に入れています
本棚に追加
/320ページ
ふと、振り返って、涼の黒い瞳を見詰める。
黒い瞳と愛嬌のある笑顔や雰囲気、そのすべてが、懐かしくてとても愛おしいものに思える。
あのチビタが人間になって、わたしの前に現れるなんて……。
全部、夢じゃないよね?
目が醒めたら、ベッドに一人きりだったりしないよね?
「大丈夫だよ。俺はどこにも行かないから。ずっとずっと、怜奈ちゃんの傍にいる」
「約束だからね?」
「うん」
「絶対?」
「うん。だから安心して?」
「涼っ」
突然抱きついたわたしに、涼は驚いて目を見開いた。
「怜奈ちゃんは、泣き虫だよね」
宥めるように涼はわたしの頭を優しく撫でる。
その涼の胸に、ギュッと顔を押し付けた。
涼の鼓動が聞こえる。
ほら、大丈夫。
これは、夢なんかじゃない。
最初のコメントを投稿しよう!