第三章 前代未聞、婚活用護衛艦出航

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「は、はい……」  雄平は予想していた通りの艦長の反応に少し固くなって答えた。 「おそらく、後者ではないかと推察いたします」 「それが分かっていればよろしい。だが、君は副長、つまり私に次ぐ艦のナンバー2として乗艦する。促成栽培だからと言って容赦はせんぞ。よろしい、出航は明日ヒト・ヨン・マル・マル時、三時間前までには乗艦を済ませるように。よろしい、下がりたまえ」  守山の部屋を出て階下へ降りるエレベーターに二人で乗り込んだところで、玉置一尉がさっそく本音を吐いた。 「ああ、もう、昭和生まれってなんであんなに頭が固いのかしらね」  相槌を打つわけにもいかない雄平は話をそらす事にした。 「そう言えば玉置一尉は平成元年生まれだそうですね。なぜ広報官に?」 「ほんとは戦闘部隊志願したんだけどね、この見た目で後方勤務にされちゃったのよ。いいかげん実年齢相応に見られたいわ」 「は、はは……普通逆かとも思いますが、複雑なんですね」  そこでエレベーターが一階に着き、チンという音とともにドアが開く。そのエレベーターに乗るためにドアの前に立っていた女性士官が二人を通そうと少し後ずさった。その顔を見て雄平は思わず叫んだ。 「美奈!あ、いや、常盤一尉。なんで海自の基地に?」 「おっと、じゃあ私はこれで」  いかにも「気を利かせてやった」と言わんばかりの少女っぽい笑みを浮かべて玉置一尉がその場を去って行く。雄平と美奈はとりあえず一階ロビーの休憩スペースに移動した。
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