2.冒険者の朝

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『『あんたはいいかげんに時間通りに起きるって事を覚えな!!』』 強烈な音と共に、女性が宿から蹴り出される。空を飛ぶヒューマンを見れるのは世界広しと言えど、ここぐらいのものだろう。 もちろん、空を飛ぶといってもそれはあくまで蹴られた勢いで宙に浮いているだけであり、その後は重力に従い・・・ 「ガハッ!い、痛い・・・。あ、昨日のお酒が・・・な、なんとかあそこまで・・・」 辛うじて這って向かいの石壁の影までたどり着き、その草むらに汚物を吐く。レナの日常であるが、とても朝に見たい風景ではなかった。 しばらく吐き気と戦ったのち、ようやく落ち着いたレナは二つの視線に気付く。 「・・・レナ、なんで君は毎回蹴り出されるまで起きないんだよ。というか、普通にお金払って宿泊まりなよ・・・」 「レナ、大丈夫ですか~?頭なでなでしてあげるです・・・よちよち、痛いの痛いの飛んでけ~ですよ!」 視線の主はアレンとパメイだった。 この世でもっとも汚いものを見るかのような目で見るアレンと、近くまでトテトテと駆け寄り、頭をなでるパメイ。 「うう、パメイは優しいね。涙が出そう・・・」 少し鼻をすすりながらフラフラと立ち上がると、噴水までその足取りのまま向かう。そして噴水の水めがけて顔を突っ込み、全てを水に流した。 「・・・ぷはぁ!気持ちいい~~~!」 噴水の泉から顔を上げたレナは、いつもは冒険と戦いの日々で痛み、くすんで見えていたブロンドの髪が朝日に輝いていた。 「・・・こうして見ると、レナも女性なんだなって思えるね」 「うんうん!レナは可愛いですよ。もっとおしゃれをするといいのにです。」 アレンとパメイの言葉にまんざらでもない表情のレナだったが、 「オシャレとかもしたいけど・・・とりあえず生活費!それに酒!!全てはこの二つのためのお金が手に入ってからよ!!」 「・・・うん、やっぱレナは女性じゃない。ただの酒豪だ・・ゴハッ!!」 アレンの余計な一言は、レナの投げた手甲が顔面に当たり強制的に止められる事となった。
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