レナの憂鬱、晴れず

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「痛っ・・・!」 彼女は腕を押さえつつ、投げられた方向を見る。 そこには、人相の悪い男が一人、投げられたナイフと形が同じものを手に持ち立っていた。 「チッ、外したか。姉ちゃん、いい反射神経してるじゃねーか。」 カリグラーゼはそれほど強力なモンスターがいない為、腕に自信のない冒険者達も多数集まる。その冒険者達を狙った盗賊くずれもまた、このダンジョンには集まっていた。彼らは通称ハイウェイマンと呼ばれている。 この男もハイウェイマンの一人のようで、ナイフをクルクルと指で回しながらレナに近づいてきていた。 「一発で仕留める気だったんだが、姉ちゃんのいい動きに免じて有り金と着ぐるみ全部置いてくなら命だけは助けてやるぜ?」 まだ血が流れる腕を押さえながら、じりじりと距離をとるレナ。しかし距離を取った分、男も近づいてきていた。 (手負いの状態でハイウェイマンを相手にするのは・・・正直しんどい、か・・・どうしよ・・・) 頭の中でこの先の行動に考えをめぐらせる。レナが推察したように、相手の実力も分からないこの状況、かつ利き腕に傷を負った状態で相手にするのは分が悪かった。 「おい、早くどうするか言ってくれねぇかな。俺は我慢強いほうじゃねーんだ!」 「見て分かるわよそんなことは。でも、我慢強くないと女の子にはモテないわよ」 「ケッ。この状況で減らず口をきける余裕があるとは根性のある姉ちゃんだな本当に・・・ククッ」 そんな言葉の応酬をしながらも少しずつ男は近づいてきている。 レナもまた後ろに少し下がった・・・その時、足に何かがぶつかる。 (ん・・・?ああ、これか・・・ふむ・・・) 一瞬だけ足元に視線をずらし、ぶつかったものを確認した。 すぐに視線は戻したが、とある行動を実行に移すべく目線は男を見据えながらも、足元にも意識を向けていた。
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