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さらに数歩後ろに下がり、歩みを止める。
(このあたりで・・・頃合か)
「おい!姉ちゃん、いつまでも見つめ合ってデートって訳にもいかねぇ。いいかげん返事をくれ。返事次第じゃ説明するまでもな・・・なっ!?」
男の言葉は、レナの行動により遮られた。
「うぉりゃあああああああ!!」
レナは、足元に転がっていた自分が狩っていたビートルの死骸の山を男に向かって蹴り飛ばした。
ハイウェイマンもカリグラーゼを根城にしている以上、ビートルなどは見慣れたものだ。しかし、突然バラバラになったビートルの死骸が大量に飛んできては、生理的な嫌悪から思わずそれを避けてしまうのも当然の事である。
「ウゲッ!?」
半分以上は避けたが既に足が半分取れかかったり羽がもげたりしている死骸である。バラバラになったもの全てを避けきる事はできず、いくつかを頭から浴びせられる事になった男は一瞬とはいえレナに意識を外し、自らにかかってきた汚物といっていいものに向けていた。
(今っ!)
ビートルの死骸を蹴り、相手がそれに意識を囚われているのを見た瞬間、一気に出口に向かってレナは駆け出した。
「てめっ・・・!」
さすがに気付いてすぐに追いかけるが、
「ゼェゼェ。おい・・・待て・・・クソッなんて速さだ。あいつシーフか・・・?」
手傷を負っているとは思えないほどの速さで駆けていくレナに、男は距離を離される一方であった。やけくそ気味にナイフも投げるが、まるで後ろに目がついているかのようなステップでナイフを避けるレナ。
やがて、ダンジョンの入り口の監視を行う衛兵の姿を見かけたハイウェイマンは舌打ちをして追うのをやめた。
レナは無事に逃げ切ることができたのだ・・・。
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