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故にカノンは、何故彼女が先日、ドイツでの極秘作戦――【オーベルテューレ】確保の作戦に抜擢されたのか、未だに釈然としないものを抱えていた。
元来コンプレックスの意識が高く、人より秀でていると主張出来るものがない彼女には、抜擢という事、それ自体が不思議で仕方ないのである。まるで罰を受けたかのような表情のカノンと対照的に、朔はごく自然に明るい笑顔を浮かべている。
「まあまあ、作戦自体はすんなり終わったし、気にしない気にしない!」
朔は人懐こい笑みを浮かべ、気にするな、と彼女の肩を叩く。カノンにとって、朔のそういった明るさに励まされることが多く、今回も自然と表情が和らぐのを感じていた。
「朔は、今日の召集は……あの、【オーベルテューレ】に関することだと思いますか?」
「ん、どうだろう」
その言葉に、一瞬、朔は真面目な顔をして、けれどすぐに笑ってみせた。
「……いや、それにしては人数が微妙かな、うん。別件だと思うよ」
そんな会話をしていると、程なくして、二人は目的地である作戦司令室に辿り着く。緊張に身を固めるカノンをよそに、朔は躊躇いなく部屋の中へ入って行った。
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