13人が本棚に入れています
本棚に追加
カノンもおずおずと朔に続いて部屋の中へと足を踏み入れる。見ると、作戦司令室には、数人の団員、そして二人の姿を見て微笑む、くすんだブロンド色の髪の青年の姿があった。
ブロンドの青年の名は、アルバート・メヌエット――先日のドイツ作戦に二人を率いた人物であり、極東戦線の司令官にして戦闘部隊指揮隊長。つまりは極東戦線で一番の権力者でもあるのだが、非情に物腰が穏やかで、面倒見が良い性格故に、近寄りがたい上官と言うよりは、団員達の頼れる兄の様な存在になっている。
カノンと朔は微笑むアルバートに一礼すると、他の団員に続き並ぶ。続々と、他の団員も集まり始めていた。
「……あれ」
「どした? 何かあった?」
とそこで、カノンは一人、見かけない人物が部屋にいることに気がついた。司令室の壇上横に佇む青年は、おそらくは、高い階級の存在なのだろうが、極東戦線では見たことの無い人物であった。
そして何よりも彼女の目を惹いたのは、その容姿――まるで、作り物の様な整った顔立ち、太陽の光のような眩い金髪に、宝石のような赤い瞳、黒い外套の下に纏っている白い軍服は、彼の高潔さを表しているようだった。
最初のコメントを投稿しよう!