何千年先も

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「えー、数馬の手料理想像した後にコンビニ?」 「明日まで我慢しろ、伊作確か明日数馬と会うんだ ろ?」 「あ、そうだった。お昼何か作りますよ、って言ってた から留三郎の分ももらってきてあげようか?」 「伊作は後輩に甘えすぎだ。もう少し自立しろ。」 「…わかった、留三郎の分はいらないんだんね。」 「それとこれとははなしが別だろ?」 少しあわてたような留三郎の声に小さく噴き出して、教 室から出る。 留三郎とこんな明るい時間にこうして話しながら歩ける なんて数百年前には想像できなかったことも今ではこれ が普通で、逆にあの頃が可笑しいだなんてよく聞くけれ ど、それなりに良い時代だったように思う。 明日の今頃は死んでるかもしれない、なんて今思えば 笑っちゃうようなこともあの頃はそれが普通でだから今 以上に毎日を必死に生きてきた。 だから、平和ないまを留三郎と一緒に歩いていきたいと 思う。 不意に、聞こえた優しい声音で名を呼ばれ、立ち止まっ て振り返る。 別に自分の名前が嫌いというわけじゃないけれど君に言 われるととても特別な響きを含むようで好きだった。 振り返った僕を見つめてくる君はひどく優しい瞳で、 ゆっくり歩いてくる。 手を伸ばせば届く距離まで近づいてくる君をどうしたの かと見つめていると、僕の鼓膜を震わせるそのいとしい 声に僕は泣きそうになった。 -----また、この世に生を受けてくれてありがと う。 -何千年先も- (何千年先もきっと見つけだして君を苛む不運から守っ て見せよう)
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