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そんな安全な鳥籠から飛び立ってもう数年。 僕の眼下に広がるのは忍にはあまりに不向きな満月とキ ラキラ光る星々。 そして、鋭利に光る苦無に肩の力を抜いた。 元々、忍には向かないなんてよく言われていたけれど、 こんなに早く最期を迎えるなんて流石に思わなかった なぁ。 今度生まれ変わったらまた君に会いたいなんて、今どこ にいるのかわからない君に思いをはせたんだ。 ね、神様は本当にいるんだよ?こうしてあの時はどこ にいるのかわからなかった君が今は目の前にいるんだも の。
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「おい、伊作。いつまでねてんだ、学校に泊まる気 か?」
何百年も前から大好きな君の声にまぶたを震わせて気付 いたら突っ伏していた身体を起こしてみる。 すると、目の前の椅子に陣取っていたらしい君は僕の顔 を見て突然笑い出すから少しびっくりして瞳を瞬くと、 顔に痕っ…と口許に手をやって笑っている。 ふと下を向くと先程まで自分が受けていたはずの教科の 教科書とノートが無造作に広がっていた。自分でも気が 付かない内に眠っていたらしい。 ずいぶんおさまってきたらしい笑いを少しずつ昇華しな がら、僕を見つめるその瞳はどこか楽しそうに揺れてい た。
「伊作、随分気持ちよさそうに寝てるから起こせなくて さ。満足したか?俺は帰りたいんだけど?」
「え…あぁ、うん。ごめん、もう大丈夫。僕おなかすい たな、数馬の手料理食べたくなっちゃった。」
「そうだな、あいつの作る飯はうまいな。よし、コンビ ニ寄ってくか。」
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