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気が付いたらそこは、現代とは遠くかけ離れた戦国の世だった。
「夢じゃない? マジの戦国!?」
目の前で繰り広げられる殺し合い。
高校二年生の築地義人(つきじよしひと)には何がなんだかもうさっぱり。
とりあえず分かるのは、足軽らしき人々が持っている槍で刺されたら死ぬということだけだ。
なにが起きたん?
率直な感想。
夜になったから寝て、眼を覚ませばリアルな殺し合い。
「あははは!」
笑ってみた。
当然意味はない。
とにかくここから離れた方が良さそうだ。
と言うわけでバイなら~!
「そこの怪しい奴、待てい!」
はい、待ちます。
義人は脱出叶わず、何やらお馬さんに乗った方々に周囲を囲まれた。
「貴様、怪しい奴め。さては間者だな」
「どこの間者だ? 今川か? はたまた北条か?」
「上野の上杉に諏訪の手の者の可能性もあるぞ」
騎馬武者たちの会話を聞くと、本当に戦国に来たんだと実感する。
戦国好きの義人としては喜びたいものではあるが、いかんせん状況が状況である。
素直には喜べない。
「一先ず姫様の下へと連れていくか?」
「それがいいな」
そんなわけで義人連行。
行き先は''姫様,,とやらの所らしい。
ヤバい、このままじゃ殺される。
義人は生唾を飲んだ。
でも脱出は不可能。
人生終了の危機だった。
「きびきびと歩かんか!」
そんなことを言われましても~と内心。
(このままどうなっちまうんだ、俺……)
死にます。
高確率で死にます。
歩かされること長時間。
着いた場所はどうやら本陣と思わしき場所。
旗印を逃さず確認する。
「げッ!」
旗印は武田葵だった。
(あれって、間違いなく武田葵だよな……ってことはその''姫様,,って……)
思っていることが正しければそうなんだろう。
『織田信◯の野望』と同じ展開のような気がした。
顔をうつ伏せ歩く。
「姫様。怪しい奴が戦場を彷徨いておりましたため捕まえて参りました。敵国の間者に違いありません」
「そう……ご苦労様」
涼しい声だ。
そして可愛い声というより綺麗な声。
この声の持ち主が''姫様,,のようだ。
「南蛮の服かしら? 変なの……顔を上げなさい」
「さっさと上げんか!」
被せ気味に言うな、馬鹿かお前。
言われなくても上げてやる。
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