お仕えするは晴信なり!

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義人は震えながらゆっくりと顔を上げた。 (こ、これは!?) 美人だ。 ジャンル的にクールキャラの生徒会長。 長い黒髪が素敵。 だが驚いたのはそこじゃない。 確かに見たことないぐらい美人なのだが、それを超越している物がある。 (こわ!? なに、その目?) まるで野生の飢えた虎。 今にも噛み殺されそうな気配がぷんぷん漂う。 義人の下半部から洪水警報発令である。 「あなた、どこの間者なのかしら?」 「言え、さっさと言わんか!」 だから間をおけよ、間を。 必死に下半部の危機を取り除き、義人はとりあえずといった感じで言う。 「あ、あああの、お、おおお俺、か、かかか間者ではな、ないです」 ビビり過ぎて噛みまくりだった。 クスッと美人さんが笑う。 「あらあら、この怯えようはとても間者とは思えないわね」 「いや、演技の可能性が」 「ここまで上手く出来る人間いないわ。それに目を見れば分かるもの。ねぇ、あなたの正体は何? 私の予想は南蛮人ね。正解? 不正解?」 「早く言わんか!」 いや、だからね……もう何も言うまい。 「あ、あの、信じてもらえないと思いますけど……」 「大丈夫よ。とにかく言うだけ言ってみて頂戴」 義人は話した。 自分が多分未来から来たこと。 知らない内に気が付いたらここに居たことを。 姫様はクスクスと笑みを浮かべる。 「へぇ、未来からねぇ……」 「姫様! 信用してはなりませんぞ!」 姫様は分かっているとばかりに首筋に人差し指を水平に当てて右に引いた。 つまり殺せの合図。 「ははは! 嘘をつくんだったらもう少しまともな嘘をつくんだったな!」 「本当ですよ!? 嘘じゃないんです!?」 大体信じてもらえないかもと前置きしたのに……。 築地義人、予想どおり人生終了のお知らせ。 現代にいるお母さん、お父さん、先立つ不孝をお許し下さい。 義人は覚悟を決めた。 「あら、死ぬときは潔いのね。ちょっと待ちなさい」 「はっ? 姫様どういうことですか?」 「気が変わったわ。あなた名前は何?」 「築地義人です」 「なら義人でいいかしらね。義人、私は見たこと無いけど海のように寛大な心の持ち主で良かったわね。仮にあなたが未来から来たのであれば一文無しで住むところもないでしょうから、私の下に来なさい」
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