2286人が本棚に入れています
本棚に追加
/3000ページ
もちろん、カツーンとしっかりクリーンヒットにするのもいいけど、こういうバントヒットも気持ちがいいね。やったった感が半端ない。
相手が俺の右打ちを警戒して寄って空いたところに間髪入れずに決まりましたから、野球脳の高さをアピールする形になる。
「3番、サード、阿久津」
「バッターボックスには、3番の阿久津が入りました。今シーズンは打率.278。14本のホームラン。70の打点もあります」
「ビクトリーズとしては、この阿久津になんとかしてもらいたいですね。ここぞという場面では、1番頼りになるバッターですから。スカイスターズはまず長打を打たれないようにすることですよね。初球は大事ですよ」
うちのベンチには足の速い選手が残っている。
1点を取る確率を少しでも上げるためには、俺に代走を使うんじゃないかと思ったが、ベンチが動く気配はない。
1塁のコーチおじさんにも聞いてみる。
「俺に代走じゃないんすか?」
そう聞いてみると、コーチおじさんは少し目線を逸らすようにしてぎこちなく答えた。
「…………ま、まあ。次の阿久津やシェパードのが足は遅いからな……」
「………?」
何を言いづらそうにしているのだろうか。
まあ、いいや。
代走ないならそれはそれで。
鬼のベースランニングをお見舞いしてやんよ。
最初のコメントを投稿しよう!