圧巻! ビクトリーズの首位いじめ

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カアンッ! 「ファウルボールの行方には、十分ご注意下さいませ!」 1ボール2ストライクとなったところから、阿久津さんは粘る。 シーズン打率は.278だが、対左になるとどうしてか打率が1割台になってしまうくらい苦手とする左ピッチャーだが、阿久津さんはそれでも必死に粘る。 インコースのボールを詰まっても無理やり引っ張って3塁方向へファウル。 アウトコースも腕をいっぱいに伸ばしてなんとかバットに当てるようにする。 低めの変化球も最後までボールを追いかけてなんとか空振りを逃れる。 そしてワンバウンドと、高めに抜けた真っ直ぐを見逃して3ボール2ストライク。フルカウントになった。 「新井、ピッチャーが足を上げたらスタートだよ。牽制もあるから慌てるなよ」 「はい」 コーチおじさんと確認をして、俺は1度ヘルメットを外して、右手首に巻いたピンク色のリストバンドで額の汗を拭う。 そして同じように汗を拭うマウンド上のピッチャーを見ながら、1歩2歩とゆっくりリードを取る。 セットポジションに入り、俺を見つめるピッチャー。 ニヤニヤとした表情で挑発する俺。 2秒、3秒と時間が経って、高く足を上げたピッチャーの重心がホーム側へと傾いた瞬間。 俺は思い切りスタートを切った。 カアンッ!!
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